まず「品種別基準」と「今日処理できる量」を確認する
実務の結論は二段階である。最初に、莢厚を含む品種別の収穫基準を満たした圃場を選ぶ。次に、その圃場のうち、収穫後の搬送、脱莢、選別、包装、予冷を滞留させずに処理できる範囲だけを刈る。莢が適熟でも、一度に大量収穫して高温下で待たせれば品質管理は崩れる。一方、設備が空いていても、予定を埋めるために基準未達の圃場を収穫してはいけない。成熟と工程余力の両方を通過したロットだけを収穫対象にする。
莢厚には全国共通の一律値があるわけではない。農研機構が公開する宮城県の研究成果では、「初だるま」と「秘伝」について、主茎上位5節の2~3粒莢が8.0ミリに達する頃、株全体に占める厚さ8.0~10.0ミリの適期莢の割合が約5~7割へ高まった。一方、新潟県の「新潟系14号」では、良食味となる莢厚を8.5~10.4ミリ程度としている。数値だけを比べて共通基準にするのではなく、品種、地域、測定部位、選ぶ莢の条件が一組になった基準として読む必要がある。
作業前の確認票には、圃場名、品種、地域指針または出荷規格の目標、前回と当日の莢厚、測定時刻、収穫候補日、予定収量を記入する。共同選果場へ出す場合は、受入量や集荷時刻も確認する。この一覧を作れば、「最も早く播いた圃場」ではなく、「適期へ入り、当日中に処理できる圃場」から収穫順を決められる。独自基準がない品種では、最寄りの普及指導機関や出荷組織に確認し、試験値の単純転用を避ける。
大きい莢を探さず、同じ株・節・位置で測る
宮城県の成果で用いられた方法は、連続する5株を選び、各株について生長点から数えた主茎上位5節の2粒莢または3粒莢から、見た目が平均的な5莢を測るものだった。測定数は合計25莢となり、枝に近い側の豆部分をノギスで計測している。これは「初だるま」「秘伝」を対象とした研究手順であり、すべての品種に25莢を義務づける基準ではない。ただし、連続株から平均的な莢を取り、測定位置を固定する考え方は、日ごとの差を比較する際の重要な参考になる。
新潟県の「新潟系14号」では、主茎最上位節の2粒莢の厚さから株全体の平均莢厚を推定できるとしている。宮城県の上位5節を測る方法とは部位が異なるため、二つを混ぜてはならない。記録票の先頭に「上位5節の2~3粒莢」「最上位節の2粒莢」など、採用した測定方法を明記する。担当者が替わっても、目立って太い莢、畝端の株、日当たりの良い側だけを選ばないよう、採取する畝と開始株も決めておく。
ノギスは莢をつぶさない力で当て、同じ方向から読む。測定時刻もできるだけそろえる。平均値だけでなく、最小値、最大値、ばらつきが分かる記録を残すと、一部だけが先行している圃場を見分けやすい。前日より急に値が下がる、測定者によって結果が大きく違うといった場合は、生育が戻ったと解釈せず、選んだ株、節、莢の粒数、測定位置が同じかを確認して測り直す。
予測日は確定日ではなく、再測定と人員配置に使う
宮城県の試験では、莢厚の肥大速度は「初だるま」が約0.18ミリ/日、「秘伝」が約0.15ミリ/日だった。この速度と目標莢厚との差から収穫日を予測できるが、予測日と実際の適期の誤差は概ね5日以内とされている。また、莢厚は気温、降水量、養分状態、病害虫の影響を受けるため、同成果も数値を目安とし、現在の莢厚と生育を観察して判断するよう注意している。したがって、予測日を収穫確定日として作業表へ固定する使い方は避ける。
予測結果は、圃場を「まだ間隔を空けて確認」「翌朝再測定」「収穫候補」の三群に振り分けるために使う。目標へ近づいた圃場は測定間隔を短くし、脱莢機の稼働時間、選別人員、容器、予冷庫の空きを仮押さえする。複数圃場が同時に適期へ入りそうなら、前日までに出荷先と調整する。朝の再測定で進み方が予測と異なれば、作業順もその場で更新する。
収穫候補となった圃場では、予定収量を一度に刈るのではなく、1ロットの量を「決めた時刻までに予冷工程へ渡せる量」から逆算する。先行ロットの脱莢や選別が遅れたときは、収穫班だけが作業を続けない。新しいロットを刈る前に、工程の待ち時間と庫の受入余力を確認する。莢厚予測を人員配置へつなげることで、適期圃場の集中を事前に扱える。
収穫後は最初と最後のロットを比べて翌朝の量を直す
秋田県農業試験場が「あきた香り五葉」を用いて行った試験では、調製後のエダマメを27度で保持すると、糖含量は収穫直後から直線的に減少した。また、収穫から予冷までを8時間から2時間へ短縮した想定では、予冷入庫時の糖と遊離アミノ酸含量を、8時間の場合よりそれぞれ19%、21%高く維持できる可能性が示された。これは特定品種と試験条件による結果であり、現場に共通する減少率や保証値ではないが、収穫後の待ち時間を管理対象にする根拠となる。
日報では、各ロットの収穫開始時刻、調製開始時刻、予冷入庫時刻、代表容器の品温を同じロット番号で結ぶ。庫の設定温度は品物そのものの温度ではないため、設定表示だけを記録して終えない。特に最初と最後のロットを測り、後半ほど予冷までの時間や品温が増えていないかを比べる。測定方法や測定位置は日ごとに変えず、比較可能な記録にする。
最後のロットで待ち時間が伸びた日は、翌朝をさらに早めることだけを対策にしない。1ロットを小さくする、搬送回数を増やす、脱莢・選別の開始を前倒しする、収穫班の一部を滞留工程へ移すなど、詰まった場所に対応する。莢厚記録は「いつ採るか」を決め、収穫後記録は「一日にどこまで採れるか」を修正する。この二つを毎日つなぐことで、適熟を待ちながら処理能力を超えない収穫計画になる。
莢厚測定から当日の作業を決める判断表
| 観察・記録 | 判断 | 当日の対応 | 次回へ残す記録 |
|---|---|---|---|
| 莢厚が品種別目標まで余裕があり、前回からの変化も小さい | 本日の収穫対象外 | 次の確認日を設定し、他圃場を優先する | 測定部位、平均・最小・最大、次回測定日 |
| 目標へ近づき、前回より肥大が進んでいる | 収穫候補として待機 | 翌朝再測定し、人員、機械、容器、予冷庫を仮確保する | 予測日、予定収量、施設の受入可能量 |
| 品種別目標を満たし、処理工程にも空きがある | 収穫開始 | 決めた時刻までに調製・予冷できる量へロット分割する | ロット番号、収穫開始時刻、予冷入庫時刻、品温 |
| 品種別目標を満たすが、選別待ちや庫の満杯が見込まれる | 品質上は適期でも全量収穫不可 | 優先圃場を選び、刈る量を縮小して出荷先とも調整する | 収穫を見送った量、滞留工程、翌日の受入枠 |
| 前回と値が逆転する、担当者間の差が大きい | 測定条件の不一致を疑う | 株、節、粒数、ノギスを当てる位置を確認して再測定する | 再測定前後の値と変更した条件 |
| 最後のロットほど予冷入庫が遅く、品温も高い | 当日の収穫量が工程能力を超えた可能性 | 翌日はロット縮小、搬送増、選別前倒しのいずれかを実施する | 最初と最後のロットの所要時間・品温差 |
HOW TO
手順
- 1
同じ株・節・位置で莢厚を測る
連続する株から見た目が平均的な莢を選び、採用した測定方法(上位5節の2〜3粒莢など)を記録票の先頭に明記して毎回同じ位置を測ります。
- 2
品種別基準と当日の処理能力を確認する
莢厚を含む品種別の収穫基準を満たした圃場を選び、搬送、脱莢、選別、包装、予冷を滞留させずに処理できる範囲だけを収穫対象にします。
- 3
予測日は再測定と人員配置に使う
目標へ近づいた圃場は測定間隔を短くし、脱莢機の稼働時間、選別人員、容器、予冷庫の空きを仮押さえします。
- 4
収穫ロットを工程能力から逆算して分割する
1ロットの量を、決めた時刻までに予冷工程へ渡せる量から逆算し、先行ロットの遅れがあれば新しいロットを刈る前に工程の待ち時間を確認します。
- 5
最初と最後のロットを比較して翌日の量を直す
収穫開始時刻、調製開始時刻、予冷入庫時刻、代表容器の品温をロット番号で結び、最後のロットで待ち時間が伸びていないか比較します。