最初に「乾燥」「かん水」「作業再開」を別々に判定する
盛夏の管理では、葉がしおれたかどうかだけでなく、畝内の土を確認してから当日の作業を決めます。農林水産省が令和8年7月に公開した産地事例では、岩手県の露地サトイモについて、7~9月頃の高温による肥大遅延や生育停滞への対策として、少雨時の積極的な通路かん水が示されています。一方、埼玉県の高温対策資料は、土壌が極度に乾燥している場合には追肥や土寄せを行わないとしています。したがって、「乾いているから予定どおり土を動かす」のではなく、「乾燥を確認したら作業を止め、先に水を確保する」が実務上の出発点です。
確認地点は、乾きやすい畝肩、平均的な畝、低く水が集まりやすい場所など、圃場の違いが表れる位置に固定します。表面の色だけで判断せず、根や芋が存在する畝の内部まで湿りが残っているかを毎回ほぼ同じ位置と深さで比べます。千葉県の「ちば丸」の試験では、地表下15センチの土壌水分を観測してかん水を管理しました。ただし、これは特定品種の高畦栽培試験で使われた方法です。深さ15センチや試験中のpF値をそのまま全国の圃場へ移すのではなく、自園では「どの地点を、どの深さで、誰が見るか」を固定するための参考にします。
かん水量は地域値の転記ではなく、設備の運転時間へ換算する
埼玉県の資料では、かん水施設があるサトイモ・ヤマノイモ圃場について1回20~30ミリ程度とし、気温の低い夕方から夜間に実施するよう示しています。これは埼玉県の高温時対策であり、土質、畝の高さ、地下水位、排水性、直前の雨量が異なる圃場に一律適用できる値ではありません。地域の栽培指針や普及指導機関へ確認したうえで、ポンプ流量、給水した面積、運転時間を記録し、「この区画で何分動かすと、翌朝どこまで湿るか」という自園の単位へ置き換えます。通路かん水では、入口だけに水が滞留していないか、末端まで到達したか、圃場外へ流出していないかも併せて確認します。
水量が限られるときは全圃場へ同じ時間ずつ配るのではなく、畝内まで乾燥している区画、肥大期にあり生育停滞が懸念される区画、給水後に排水できる区画から順序を決めます。農林水産省がまとめた令和7年度の影響調査では、サトイモへの適正なかん水に対する留意点として、水稲の要水時期との重複と雑草の増加が挙げられています。取水枠だけで計画せず、水稲との配水調整、取水可能な時間帯、かん水後に増える畝間雑草の管理まで作業表に入れます。水が余ったから追加するのではなく、次の確認時刻まで含めて一区画ずつ完結させることが重要です。
追肥・土寄せは、かん水終了時刻ではなく土の状態で再開する
かん水を終えた直後に追肥・土寄せを自動的に再開するのは避けます。まず設定した定点を再び確認し、畝内へ水が届いているか、通路に長く滞水していないか、土が機械や靴へ強く付着する状態ではないかを見ます。水が届いていない場所があれば給水ムラを直し、滞水している場所があれば排水を優先します。再開条件は「かん水から何時間後」と固定せず、「畝内の乾燥が解消し、土を動かしても大きく練らない状態」のように圃場で確認できる言葉にします。翌朝も極端な乾燥が残る場合は、追肥量を増やして補おうとせず、地域の指導機関へ管理方法を相談します。
作業記録には、予定していた土寄せ日だけでなく、乾燥を確認した日時、確認地点、かん水の開始・終了時刻、設備の運転時間、翌朝の湿り、実際の追肥・土寄せ日を一続きで残します。これにより、同じ圃場で次に乾いたとき、前回の運転時間で末端まで届いたか、何日後に作業できたかを比較できます。追肥量や土寄せ時期そのものは、品種、作型、基肥、マルチの有無によって異なります。千葉県の「ちば丸」では緩効性肥料と高畦マルチを組み合わせ、追肥・土寄せを省略する体系も試験されています。慣行体系へ数値だけを混ぜず、自園が採用している栽培体系の指針に沿って判断します。
多すぎる水も避け、翌朝の結果から次回設定を修正する
サトイモは乾燥対策が重要ですが、「多く入れるほどよい」とは限りません。千葉県の「ちば丸」の試験では、水分不足時に「だるま」や「芽なし」が増える一方、多かん水では過繁茂となり、「青芋」や「長」の発生が多くなったと報告されています。この結果は試験品種と栽培条件に限定して読む必要がありますが、過不足の双方を観察する根拠になります。翌朝は土の湿りだけでなく、通路の滞水、葉の回復、生育の偏りも確認し、運転時間が長すぎた区画と不足した区画を分けます。次回は全区画の設定を一括変更せず、問題があった区画だけを修正します。
葉焼け、萎れ、変色が続いても、外観だけで水不足、病害、生理障害を断定しません。発生位置、広がり方、土壌水分、かん水履歴を写真とともに残し、回復しない場合は普及指導機関へ相談します。高温乾燥時にはアブラムシ類やハダニ類への注意も埼玉県資料で示されていますが、薬剤散布の要否を症状だけで決めることはできません。防除する場合は、都道府県の最新の発生予察情報を確認し、農薬登録情報と製品ラベルで対象作物、対象病害虫、希釈倍率、使用時期、使用回数を確認します。かん水記録と病害虫記録を同じ圃場番号で結び付けると、単なる水不足と決めつけずに相談できます。
サトイモの乾燥確認から土寄せ再開までの判断表
| 定点の状態 | 当日の判断 | 次に確認すること | 残す記録 |
|---|---|---|---|
| 畝内まで極度に乾燥している | 追肥・土寄せを保留し、用水と排水先を確認する | 夕方から夜間のかん水後、同じ地点の水分を再確認 | 地点、深さ、乾燥確認時刻 |
| 表面は乾くが畝内に湿りがある | 一律にかん水せず、乾きやすい地点を追加確認する | 翌日も同じ時刻・地点で乾きの進行を比較 | 降雨、地点別の湿り、生育段階 |
| かん水しても末端が乾いている | 追肥・土寄せは末端区画で保留し、給水ムラを点検する | 流路、ポンプ流量、運転時間、漏水を確認 | 開始・終了時刻、末端到達時刻 |
| 通路に滞水し、土が強く付着する | 追加かん水と土寄せを止め、排水を優先する | 滞水解消後の畝内水分と土の作業性 | 滞水範囲、排水完了時刻 |
| 畝内の湿りが戻り、滞水もない | 地域指針と生育段階に照らして追肥・土寄せ日を再設定 | 作業後の土の状態と生育変化 | 実施日、区画、追肥量、作業条件 |
HOW TO
手順
- 1
乾燥・かん水・作業再開を別々に判定する
表面の色だけで判断せず、固定した定点で畝内部の湿りを確認し、極度の乾燥があれば追肥・土寄せを保留してかん水を先に行います。
- 2
かん水量は設備の運転時間へ換算する
地域資料の目安値をそのまま転記せず、ポンプ流量や給水面積、運転時間を記録して自園の単位に置き換え、末端到達も確認します。
- 3
追肥・土寄せは土の状態で再開する
かん水終了時刻ではなく、畝内へ水が届き滞水がなく土を動かしても大きく練らない状態を確認してから再開します。
- 4
翌朝の結果から次回設定を修正する
通路の滞水、葉の回復、生育の偏りを確認し、運転時間が長すぎた区画と不足した区画を分けて次回は問題があった区画だけを修正します。