外気温ではなく、午後の外周果から対象数を出す
最初に行うのは資材の購入ではなく、晴天日の午後に樹冠外周を一巡し、日光を直接受ける果実を区画別に数えることだ。山口県農林総合技術センターの試験では、夏季の樹冠外周果の果皮表面温度が43~44℃に達し、外気温より約5℃高くなった。加温試験では40℃が3時間以上続くと日焼けが認められ、45℃以上で症状が顕著になっている。予報気温だけでは果面の危険を判定できない。
巡回では、樹冠から突き出した果実、上向きで葉の影が移りやすい果実、乾燥しやすい区画を先に見る。同センターは、乾きやすい土壌条件や極早生・早生ウンシュウ、「せとか」で発生が多いと報告している。ただし、品種名だけで処理対象を決めず、実際の露出位置を確認する。果実の南側と西側を見て、午後まで直射が残る面に印を付ければ、必要な処理数を具体化できる。
放射温度計がある場合も、単一の測定値を発生予測値として扱わない。測定時刻、距離、角度をそろえ、外周果と葉陰の果実を比較する用途に限ると使いやすい。機器がなければ、同じ時刻と撮影位置で写真を残し、「直射が続く」「一時的に葉陰になる」「樹冠内」の3段階に分ける。最優先は直射が続く外周果であり、この個数がテープや作業時間を見積もる基礎になる。
摘果で日陰を残してから、被覆する果実を確定する
山口県の成果でいう樹冠表層摘果は、樹冠表面の果実を整理し、葉裏にある果実を残す方法である。日焼け対策としては、単に摘果個数を満たすのではなく、葉が作る日陰をどこに残すかが要点になる。地域の摘果基準、樹勢、着果量を優先しながら、同程度の果実なら長時間露出する果実から摘果する。葉陰の果実でも枝や果実との接触が強いものは別途選別する。
摘果前にテープを多数貼ると、その後に落とす果実へ資材と時間を使うことになる。このため、二つの県の成果を一園で組み立てる実務上の順序は、「摘果基準を確認する」「表層果を整理する」「樹を外から見直す」「残った直射果を数える」となる。これは試験区をそのまま再現するという意味ではなく、摘果と被覆の重複作業を減らすための工程設計である。
摘果によって枝が動くと、それまで葉陰だった果実が露出する場合がある。作業者は摘果を終えた側から樹冠を一周し、新しく日が当たる果実を再判定する。区画名、対象樹数、処理候補果数を記録し、候補果数に1果当たりの試し貼り時間を掛ければ、その園で必要な延べ時間を見積もれる。研究値をそのまま自園へ当てはめるより、50~100果程度で実測して工程表へ反映する方が現実的である。
専用テープは試験条件と製品注意を分けて読む
鹿児島県農業開発総合センターは、20年生「かごしま早生」で8月上旬に専用粘着テープを陽光面へ貼る方法を検証した。晴天日の測定では、無処理より果面温度が約4℃低く、化繊布と同程度の日焼け軽減効果が確認された。10a当たり4,872果を処理する試算では、貼付と除去の合計が能率優先で9.6時間、精度優先で25.4時間だった。これは特定の樹齢、品種、処理果数による試算であり、自園の標準時間ではない。
製造元の菊水テープは、製品の貼付時期を梅雨明け直後の目安としつつ、地域や年の気温推移で異なるとしている。一方、鹿児島県の試験で効果を確認したのは8月上旬である。したがって、暦日だけで決めず、摘果終了時期、直射果の発生、果実の肥大、地域指導を合わせる。製造元は、貼付が早すぎると肥大に追従できず剥がれやずれが起こり得るとも注意している。
使用するのは、果実への貼付を用途として表示した資材とし、一般的な梱包テープを代用しない。製造元によれば、対象製品は白いラミネート加工クラフト紙と天然ゴム系粘着剤から成り、果面のほこりや汚れ、水分を除いて押さえて貼る。貼付位置は作業者から見える正面ではなく、実際の陽光面で決める。農薬散布予定との干渉、出荷時の扱い、廃棄方法も、地域の指導機関や出荷先と事前に確認する。
再点検日と終了条件まで作業表に入れる
テープ処理の成否は、貼った果数だけでは評価できない。鹿児島県の成果では、降雨や強風で剥がれた場合は速やかな再貼付が必要とされ、果実肥大で枝が下垂すると、日光の当たる位置が貼付面からずれて日焼けする場合がある。まとまった雨や強風の後、摘果や枝管理の後、果実の向きが変わった時を再点検日にする。剥離片を回収する袋も携行する。
広い範囲を面的に処理したい場合は、炭酸カルシウム水和剤も比較対象になる。農林水産省の農薬登録情報提供システムでは、ホワイトコートが「みかん」の日焼け軽減について25~50倍、200~700L/10a、2回以内、日焼け果発生前の散布で掲載されている。登録内容は変更され得るため、使用直前に最新情報と製品ラベルを確認し、作物名、目的、希釈倍数、使用回数をすべて守る。
終了は「貼ってから何日」で機械的に決めない。製造元は暑さのピーク後の除去を案内し、長期間残すと着色の遅れや、テープ下へ薬剤が届きにくいことに伴う害虫発生のおそれを示している。新たな日焼けが見られないこと、地域の高温期が過ぎたこと、収穫までの管理予定を照合して除去する。最後に処理果数、再貼付数、ずれた果数、日焼け発生位置を残せば、翌年は処理対象と必要人数をさらに絞れる。
日焼け対策の現地判断表
| 確認場面 | 現地で見えた状態 | 優先する対応 | 次の確認 |
|---|---|---|---|
| 摘果前 | 外周部に直射果が多い | 地域基準の範囲で樹冠表層摘果を行い、葉裏の果実を残す | 摘果後に樹を一周し、新しく露出した果実を数える |
| 摘果後 | 直射果が少数に絞れた | 果実用として表示された専用テープなどの個別被覆を検討する | 雨、強風、枝の下垂後に剥がれと陽光面を確認する |
| 摘果後 | 危険果が広い範囲に分布する | 登録内容を確認し、面的に処理できる炭酸カルシウム水和剤を比較する | ラベル、使用回数、散布量、出荷先の扱いを使用前に確認する |
| 処理後 | テープが剥がれた、または日射位置がずれた | 現在の陽光面を確認して再貼付し、落下片を回収する | 再貼付数と発生区画を記録する |
| 高温期の終盤 | 新たな日焼けが見られず、暑さのピークを過ぎた | 地域情報と収穫予定を照合してテープを除去する | 着色、テープ下の害虫、粘着剤残りを確認する |
HOW TO
手順
- 1
午後の外周果を数える
晴天日の午後に樹冠外周を一巡し、樹冠から突き出した果実、上向きで葉の影が移りやすい果実、乾燥しやすい区画を先に見て、直射が続く果実を数えます。
- 2
樹冠表層摘果で葉陰を残す
樹冠表面の果実を整理し、葉裏にある果実を残す方法で、同程度の果実なら長時間露出する果実から摘果します。
- 3
摘果後に新しく露出した果実を再判定する
摘果を終えた側から樹冠を一周し、新しく日が当たる果実を再判定して区画名、対象樹数、処理候補果数を記録します。
- 4
専用テープを陽光面へ貼る
果実への貼付を用途として表示した資材を使い、果面のほこりや汚れ、水分を除いて実際の陽光面に密着させて貼ります。
- 5
降雨や強風の後に再点検する
まとまった雨や強風の後、摘果や枝管理の後、果実の向きが変わった時を再点検日にし、剥がれや陽光面のずれがあれば速やかに再貼付します。